四谷進学会による海城中学高等学校-学校インタビューです。

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注目校インタビュー

海城中学高等学校

海城中学高等学校-学校インタビュー

四谷:今回は、海城中学高等学校の校長特別補佐、中田大成先生にお話しを伺います。中田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

中田:よろしくお願いします。

四谷:海城が求める教育について、お伺いできますか?

中田:本校では、21世紀の新しい時代に活躍するためには、「新しい人間力」と「新しい学力」を育成する必要があると考えています。まず、「新しい人間力」についてですが、「新しい人間力」には大きく分けて2つの要素があると考えます。一つは、「対話的なコミュニケーションの力」です。世界全体を見渡してみるとグローバル化が進み、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて行き来し、国籍はもとより言語・文化も異なる人達と関わって生きていく必要が生じています。一方、国内においては、社会の成熟化に伴い価値観が多様化し、衣・食・住の内、衣・食については一定の欲求はほぼ満たされ、その先何を食べるか、何を着るかは人それぞれといった状況となっています。要は国の内外を問わず、前提を共有しない、価値観の異なる者同士が互いに関わって生きていかなければならない時代が到来しているわけです。そこで必要とされる異質な人達と関わる能力とは、すなわち「多文化共生の力」であり、それは具体的には暴力などではなく、「対話的なコミュニケーション能力」です。次に必要となるのは「コラボレーション能力」です。私達はいつの時代も労働と関わって生きていかなければなりません。前提を共有しない異質な人同士が同じグループで仕事をすることは、一見非効率的で難しく感じます。しかし観点を変えれば、同質な人達が3人寄っても、1+1+1はせいぜい3止まりですが、異質な人達がそれぞれ良いところを引き出し合ってうまく組み合わせれば、シナジー効果や創発が生じ結果は4や5にもなります。これを可能にするのが「コラボレーション能力」なのです。

 07 授業風景 候補2

次に、「新しい学力」についてお話しします。20世紀末までに日本において必要とされた「従来の学力」とは、教科書に象徴されるような体系立った知識をまず頭に入れて、それを必要な時に速く正確に、自在に取り出すといった知識獲得型の能力でした。その能力獲得のために相応しい学習は、系統だった知識を一つ一つこなしていく系統学習であり、具体的な授業の形態としては、一斉講義形式の授業が有効でした。ところが、世紀が代わり新しい時代に入った日本では、社会システムも複雑化し、少子高齢化など様々な問題が生じています。日本は世界で最も速く高齢化が進むと言われていますが、だとするとその解決策を他国に求めることはもはや出来ません。自分たちで考えなければならないのです。そこで必要とされるのが、「課題設定解決型」の学力です。単なる系統学習だけではそうした学力は身に付きません、探究型の総合学習が必要とされます。具体的な授業形態としては、「双方向的な講義」や生徒参加型の「アクティブラーニング」が有効だと言われています。最近になってアクティブラーニングが話題になっていますが、本校では1990年代初頭にはすでにそれを始めていました。その後、2000年代に入り、OECDがPISA(国際的な学習到達度調査)を開始しますが、2003年・2006年と連続して日本の成績が悪く、国内にPISAショックが走ります。その調査で測られていたのは、実は前述のような「新しい学力」だったのです。当時本校ではそれを「クリティカルシンキングの力(統合的な学力)」と呼んでいたのですが、それは次の5つの要素の統合体としてイメージしていました。第一に自ら課題を設定する力。第二に情報を調査・収集する力。第三に深く考え分析する力。第四に価値選択する力。そして最後に選択した解決方法を分かり易く表現する力です。複雑化した社会ではそもそも唯一絶対の解など無い場合が多く、最適解を選び取る必要があります。それを判断する力が、第四の「価値選択する力」です。

 続いて、そうした「新しい人間力」・「新しい学力」をどう身に付けさせるかが次なる課題となるのですが、新しい人間力養成の為に本校が実施している具体的な教育実践としては、「PA(プロジェクトアドベンチャー)」と「DE(ドラマエデュケーション)」という2つの体験学習があります。PAは、中1・2年で行われているアメリカで開発された体験型プログラムです。屋外の専用施設を使って体を動かしながら、アクティビティに挑み、仲間と共に課題をクリアしていきます。丸太の上に並んで言葉を発することなく生年月日順に並び直したり、高所で命綱に支えられながら綱渡りをしたりします。

04 pa 綱渡り

DEは、イギリスを中心にヨーロッパで広く行われている体験学習で、演劇的な手法を用いながら、人間関係力や創造性を養います。例えば、グループで大人から印象に残った話を聞き書きし、それに基づいて台本を作り、芝居の形で演じたりします。これら2つを中心として、共生や協働、創造性、そしてそれに関連する多くの能力を身に付けていきます。単なる座学ではなく、身を持って学んだ上で、さらにその振り返り学習を行うことで個別の気付きを一般的な知見に高めて習得します。

 「新しい学力」を身につけるため、本校は1992年の改革元年から、まずは社会科で探究型総合学習を開始しました。中1から中3までの3年間、社会科配当の週4~5時間のうちの半分に当たる2時間は、教科書を一切持たせません。学期ごとに課題やテーマを与えていろんな場所に取材に行き、それに文献やネットの情報を加えて解決方法を考えた上で、ディスカッションやプレゼンを行って中身を洗練させ、最後にレポートにまとめるという一連の作業を、毎学期1回、中1・2で都合6回行います。

四谷:中1・中2合計6回とは、とても多く感じます。

中田:多いと思います。これだけの数をこなしていくと、作文力もプレゼン力も飛躍的に伸びていきます。中1の1学期では400字詰め原稿用紙にして7~8枚程度だったものが、2学期には8~9枚になり、3学期には10枚を超え、中2の終わりには20枚を超える程になります。中3になると、1・2学期掛けて、各自で自由課題を設定し、卒業論文の作成に取り組みます。どこに出しても恥ずかしくない厳正な論文形式で、最少30枚、多い子で50枚程書きます。つまり、本校の生徒は文系理系を問わず、中3段階で既に大学レベルのプレゼン力やレポート作成能力が身についていると言えます。おそらくこの分野に関しては、他校の追随を許さないレベルになっていると自負しています。

四谷:大変素晴らしい取り組みですが、新しい学力を身につける方針をとるようになったきっかけはありますか?

中田:一つには100周年を迎えたことがあります。もう一つは、90年代当時、本校は東大合格者の数が、毎年コンスタントに40~50人程度に達していましたが、その一方で、東大に入ってから留年する率が高かったりもしました。要するに、受験勉強で燃え尽きてしまい、そこから継続的に学習していくことが出来ないといった卒業生が少なからずいたのです。そのような人材を多く出し続けても社会のためにはならず、「国家・社会に有為な人材の育成」という建学の精神に反します。そこで、学習意欲を先々まで持ち続ける人材育成へと教育内容を変える学校改革が始まったのです。それから20数年、一貫して総合的な学習に取り組み続けた結果、本校の卒業生は大きく変わりました。

 06 授業風景 候補1

四谷:知識を身に付けるための学習はいかがでしょうか?

中田:もちろん「新しい学力」だけでなく、従来の「知識獲得型の学力」も大切です。要はバランスが大切なのであって、知識獲得型の系統的な学習もきちんとやらなければいけません。特に英数国の主要教科は、基礎基本が大切ですが、この分野については本校は従来から定評があります。70年代~80年代に掛けて受験校として成長していく中で、先生方が徹底して行なってきた蓄積があります。本校は、習熟度別授業は実施していません。ただ、つまづきかけた生徒に対しては、先生方が汗をかいて、こまめに指導するという方針をとっています。つまづきかけた生徒向けの補習はもちろん、放課後にはそうした生徒たち向けの講習も設けられます。因みに学期中の放課後講習は、発展・応用型の講習や教養的なものなど、様々あり、先生方からの提案や生徒からの希望によって行われます。夏期講習や冬期講習も毎年行われ、特に夏期講習は1週間前後実施されます。それが高2になると2週間に増え、高3になるとお盆休み以外の40日間全てが夏期講習期間となります。高3では合計約80もの講座が立ちます。例えば、「東大世界史」や「センター現代文」など、個別大学の入試問題に準拠した講座が数多くあるので、学校の勉強だけで十分な入試対策が行えるようになっています。このように、従来からの伝統に基づいた、きめ細かい知識獲得型の学習も失われたわけではありません。

四谷:海城と言えば医学部合格者が多いことで定評がありますが、特別な対策を行っているのですか?

中田:放課後講習の一つとして、「医学部小論文面接講座」というものがあります。きっかけは、医学部志望の生徒をバックアップしようとする先生方が最初は手弁当で始めた講習です。はじめの頃は30~40名程度の志望者を対象としていましたが、今では70名を超える程になっています。

09 医学部小論文面接講座

なかなか贅沢な授業で、社会の先生2名、理科の先生2名、国語の先生1~2名の協力で行われます。内容は過去問演習などではなく、毎学期テーマを決め、そのテーマに関わる新聞記事などを用意してみんなで読み、その課題についてディベートしたり、論文を書いたりします。例えば、「脳死と家族の問題」というテーマであれば、社会科の先生が解説します。また「iPS細胞とは何か」ということであれば、理科の先生が解説したりします。

 そして生徒が論文を書き、国語の先生が添削して講評するのです。本校は確かに医学部合格者が多いですが、学校が特に勧めているわけではありません。先ほどお話しした社会科の総合学習にお話を戻すと、これは単に課題学習だけではなく、「キャリア教育」にもなっているのです。大人が働いている最前線へ取材に行くことは、自分の職業を考えるきっかけにもなるのですが、なかでも医療現場に行くと大変感動して帰って来る子が多いです。感化されて自分も医師になりたいという子が10数年前から非常に増えました。ある生徒もそういったきっかけから、医師を強く目指すようになるのですが、彼の家は経済的にそれほど裕福ではなく、国公立医学部しか選択肢がありませんでした。そのような生徒達を何とかしたいという理由から、有志の先生方が始めたのが、先ほどの小論文面接講座であり、その後少しずつその取り組みをバックアップする体制を整えていったという経緯があります。医学部合格者が増えたのはそうした結果でしかありません。

四谷:それでは、今出てきた「キャリア教育」についてもお聞きしたいです。

中田:本校では高2から文系理系に分かれますが、高1の秋にはどちらにするか決定しなければなりません。それまでに漠然とでも就きたい職業ややりたいことを考え、そこからどんな大学や学部に進むべきか考える必要があります。そこで、高1・高2では各界の著名人をお招きした講演会や、OBによるシンポジウムを開いたり、適正判断テストや職業紹介イベントを行ったりします。

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四谷:生活指導の点ではいかがでしょうか?

中田:「安心・安全ベース」の学習空間を作ることを大切にしています。グループで何か一緒にやる時は、お互いに心の壁を下げる方向で関わらないと、パフォーマンスが上がりません。心の壁を上げてしまうと、お互いに萎縮し合い牽制し合って、コラボレーションは到底叶いません。このことも、1990年代から2000年代に掛けての大きな課題でした。1995年にWindows95が発表されて、それ以後インターネットが広がり、バーチャルの世界が生じました。これによってリアルワールドである学校空間が、時として、猜疑心に満ちた「不信・不安ベース」の空間になったりもします。当時2000年のはじめに、或るクラスの授業を観ていて、非常にショックを受けた出来事がありました。それは高校生の或る教科の発表授業で、順番に生徒が前へ出て発表していく形でしたが、発表する生徒全員が、次々と自虐的なネタを言って笑いを取ろうとするのです。ところが、その笑いが非常に不健全で、痛々しいのです。なぜこういうことをやるかというと、その場で真面目くさったことを言うと、その日の夜にネット上で冷やかされたり、茶化されたりする。それが嫌で、どうせ笑われるのなら初めから自らコケて、笑われてしまおうという自己防衛のための手段としてそれを行っていたわけです。それは非常に不健全なリアルワールドですよね。バーチャルの世界で茶化されるのが嫌だから、現実の世界では萎縮し、牽制し合っている。そんな発表の授業をやっても授業のパフォーマンスが上がるわけがない。このような、不信・不安ベースではいけない、安心・安全ベースの空間を作らないと、高いレベルでのアクティブラーニングは出来ないという結論に至りました。

 安心・安全ベースの空間作りの一手段として、PAには「ビーイング」があります。アクティビティをする前に、みんなで大きな模造紙に一人ひとり手形を縁取り、それらをつなげて円を描きます。

13 ビーイング

みんなで意見を出し合って、円の中には「やって欲しいこと」、外には「して欲しくないこと」を書きます。最後に各々自分の手形に署名してみんなで作ったルールを守ることを誓うのです。クラスでトラブルやいざこざが起こったときには、その模造紙を広げてルールを確認し、対立を克服・解消します。

ただし、ルールの縛りよりも大事なのは、自発的な環境形成です。それには、「不信・不安ベース」よりも「安心・安全ベース」の方が心地よいということを、身を以て知っている、経験していることが大事です。

それはこういうことです。

授業中、先生が何か質問をしたとします。A君が手を挙げて答えてくれたけど、間違っていたとき、その子を周りの子が笑ったり冷やかしたりすると、彼の心の壁は一気に上がってしまいますよね。彼はもう二度と手を挙げないかも知れない。それがB君もC君も・・・となってくると、お互いに牽制し合い、教室は疑心暗鬼の淀んだ空気で覆われます。その結果、授業のパフォーマンスは確実に落ちます。でも心の壁というのは一度上がると、自分ではなかなか下げられません。周りの人間が「ドンマイ!ドンマイ!」とか「オレなんてしょっちゅう間違ってるよ」と言ってくれたりすると、下がるものです。心の壁を「互いに下げ合う」ということがとっても大事になります。

また、別の譬えを用いるなら、心の壁が下がっている状態とは、鎧を着ていない状態ともいえます。なので、ナイフでぐさりとやったら大怪我をする。だから、せせら笑ったり冷やかしたりはお互いに絶対にしないようにしよう、でもその方が居心地いいよね、PAやったときそうだったよな、という話になります。

そういったことをPAやDEを通して学ばせておく。通常の徳目主義的な座学の道徳教育ではなく、身を以て、体験を通じて行う道徳教育、これが生徒指導・生活指導のベースにあります。

四谷:コミュニケーション力を高める教育に特に力を入れ始めたのは、約10年程前からだったとのことですが、それには何か理由が有ったのですか?

中田:本校には「リベラルでフェアーな精神をもった新しい紳士の育成」という教育理念があります。紳士であるためには公正さが必要であり、それには立場を入れ替えた時に受け入れられないことは良しとしない・潔しとしないという倫理・美学が大事です。だとすると、自分の行いを相手がどう受け止めるかを想像したり、場合によっては直接相手に働きかけて確かめるコミュニケーション力が必要となります。フェアネスを担保するためには、コミュニケーション力は欠かせないのです。

高1・2 イギリス・スピーチづくり

1990年代においては、学校行事やクラブ活動といった教科外活動を通して、立場の異なる人や、異年齢の人と関わることで、一定のコミュニケーション力は保たれていたと思います。しかし、2000年代に入るとこれだけでは機能しなくなってきたのです。例えば、本校の体育祭は各学年が色ごとに縦割りに分かれて団を作って競い合います。1990年代までは指示をすると、上級生が下級生を巻き込んで自然と一体となり練習をしていました。ところが、2000年代に入ると、「やりなさい」と言っても学年ごといつまでもばらばらで練習が始められないということが起こり始めました。たった1学年違うだけで、関わり合えない程子供たちのコミュニケーション力が低下していたのです。

2000年前後の或る年の函館・修学旅行では、朝市で自由時間を取ってから、赤レンガ倉庫に集合することになっていました。前の晩には朝市をガイドブックで調べたりして、翌朝喜び勇んで出ていくのに、またたく間に赤レンガ倉庫に来てしまう生徒が大勢居ました。どうしたのか聞いてみると、朝市のお店の人達にいろいろと話しかけられて怖いとか、苦手だと言って帰ってきたということでした。日本の都会では、商店街の多くがなくなってしまっていて、あるのはコンビニやスーパー、ファーストフード店ばかりです。そこでは店員の対応はほとんどマニュアル化されています。そのような対応にしか応じていないと、自然とコミュニケーション力は落ちていきます。これではまずい、コミュニケーションのイロハから教え込まねばということで、PAやDEのプログラムを探しだし、実施に移したという経緯があります。

四谷:最後に、入学を希望する生徒さんに求めることはありますか?

中田:文科省からも提言されているように、学校はアドミッションポリシーをきちんと立てる必要があります。これは大学に限らず中等教育段階でも必要で、どんな生徒達を集めたいかというアドミッションポリシーと、それに連動したカリキュラムポリシーが必要です。本校の入試問題もきちんとしたアドミッションポリシーに基づいて作成・出題されています。社会科の入試問題を例に挙げると、大問は1題しか出しません。そのうち半分近くが記述問題になっています。文章は歴史・地理・公民を融合したような内容を選んでいます。基礎として、知識確認的な問題ももちろんありますが、記述問題で出てくるのは、思考力と表現力を問うものです。ただし、社会科の記述問題は、いわゆる完全自由記述問題や意見陳述問題のような自由に書きなさい、という類のものではなく、下線部3については資料1~3を参考にして説明しなさい、という形式です。つまり、資料の中に必要な情報が入っているので、それを適切に抜き出し、相互の関係を見通して文章化することで、一定の解答が得られるという問題です。問題によっては、小学6年生段階で持っていなければならない知識とも関連づけながら、自分の考えを表現してもらいます。ですので、学校としては、そうした知的営みを厭わず、前向きに取り組める生徒さんに是非とも入学してもらいたいと思っています。

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PA(プロジェクトアドベンチャー)

中1・中2を対象として行っている体験型プログラムが、「PA(プロジェクトアドベンチャー)」です。中1では「ローエレメント」という施設を使ったアクティビティを行います。写真をご覧ください。これが屋外でやっている様子です。一見アスレチックのように見えますが、これはPA専用の施設で、専門のファシリテーターに導かれながら行います。このアクティビティはしごく単純で、ランダムに生徒達を丸太の上に乗せ、課題を与えます。向かって左側から生年月日の若い者順に並び替えるよう指示するのですが、「言葉を使ってはいけない」というルールで行います。もちろん、丸太から落ちてはいけません。お互いに自分の位置が正しいのかを、隣の子に対して身振り手振りを使ってコミュニケーションを取ります。そして入れ替える必要があるとお互いに認識すると、入れ替え作業に入るのですが、そこでも試行錯誤しなければなりません。横向きになって足を交差させて、スライドさせてなんとか入れ替わろうとしたりします。時には、背の低い子がしゃがみこみます。そしてその上を背の高い子がまたいで渡ろうとします。すると他の子が支えてあげたり、色々と工夫し始めます。そういうことを一定の時間を与えてやらせるのです。このアクティビティによって生徒達が気づくことが主に二つあります。一つは、人間は言葉を使わなくても、伝えたいという強い意思があれば、なんとか意思疎通が出来るということ。ただそれは裏を返せば、言葉があればすごく楽なんだという気づきに繋がります。もう一つは、人間には体の大きい子もいれば小さい子もいるが、人間の価値として、背の高い子が一番というわけではないという気づきです。背が低いという特性を、しゃがむことによってプラスの方向に発揮し、それらを重ね合わせることでより高いパフォーマンスを達成する。これこそがコラボレーションであることを、身をもって学んでいくのです。もちろん、綺麗に並び替えられる班もあれば、そうでない班もあるのですが、PAで大事なことは、一つのアクティビティを行った後の振り返り学習です。1回きりの個別の理解ではなく、その気付きを一般化し、教室に持ち帰って日常生活で活用することが大事なのです。

DE(ドラマエデュケーション)

演劇的な手法を用いながら、人間関係力や創造性を養う体験学習がドラマエデュケーションです。現在、中2が行っているプログラムでは、大人を囲んで生徒5~6名が聞き書きを行います。近くの商店街の方々や、先生の知人など、延べ40~50名に参加いただいています。ゲストにはこれまでの人生を振り返って特に印象的な出来事やシーンを語ってもらい、できるだけその人の喋り方まで復元できるよう、正確に聞き書きをします。それをもとに台本を書き、芝居を演じるのですが、これによって生徒達はいくつかのことを学んでいきます。まず一つ気づくことは、同じ人の話を聞いているにもかかわらず、自分と他の子のメモとでは微妙に違っているということです。そうなると、頭の中で想像しているシーンも、一致しているか怪しくなります。つまり、実は人間が理解し合えたり共感し合えることは容易いことではなく、むしろ分かりあえないことの方が自然かも知れないという気づきです。でも、そのまま放っておいても台本も出来ないし、芝居にもならない。そこでお互いのイメージを少しずつ擦りあわせていきます。これが対話的コミュニケーションの基本となります。そして最後に自分達で作ったものを「表現」という形で観客に対して届けなければなりません。色々と工夫して気持ちが届いた時の喜びは、何にも代えがたいものだと知ります。こうしたことを通じて、表現することの難しさや、それを乗り越えるために何が大事かを学んでいきます。

グローバル教育

1992年から始まった本校の改革は、大きく分けて3つのステージに分かれています。第1ステージでは新しい学力の養成プログラム、第2ステージでは新しい人間力の養成プログラムが開発・導入されました。第1、第2ステージまではほぼ整備が出来ました。そこで2010年代に入ると、いよいよ第3ステージの改革として、「グローバル教育」に着手しました。2011年から帰国生入試を開始し、毎年30名の子どもを世界中から集め、異なった生活体験や学習体験を持った子どもを入れるようにしました。従来から異質性を重視していた本校は、高校入試で約100名を募集し、異なった中学生活を経験した生徒たちを内部生とすぐに一緒のクラスにしました。しかし、近年公立中学校育ちの子と内部生との間の違いがだんだん薄れてきているように感じられました。そこで高校募集を取りやめ、中学入試から、海外で全く異なった経験をした子ども達を集めるため、帰国生入試を始めることにしました。英語学習にももちろん力をいれていて、2012年からは「グローバル教育部」を発足し、一般の生徒も含めた英語学習を加速させています。その一つが、4技能(聞く・読む・話す・書く)重視の英語学習です。例えば、ここ数年間では、夏休みに希望者対象のサマーキャンプを長野県・白馬で企画したりしています。また以前から希望者対象にアメリカやロンドンでの短期の語学研修も行っています。海外研修の人気はうなぎ昇りで、応募者が3倍近くになってきたので、それに漏れてしまった生徒たち向けの代替のプログラムを用意したり、紹介したりしています。また、海外の大学への進学希望者も増えてきているので、海外進学説明会やカウンセリングを行ったり、アメリカの共通テストSATやTOEFL対策を指導するネイティブ教師を雇用しています。

大学入試結果(2015年度)

東京大学56名
京都大学6名
一橋大学17名
東京工業大学9名
北海道大学2名
東北大学7名
秋田大学1名
筑波大学11名
群馬大学4名
埼玉大学2名
千葉大学17名
横浜国立大学10名など

☆私立大学(総数694名)
早稲田大学157名
慶應義塾大学118名
上智大学20名
青山学院大学9名
学習院大学2名
中央大学40名など

☆医学部
国公立医学部43名 ※東京理Ⅲは含まない
私立医学部68名

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