不登校の近年の実態|四谷進学会「いま話題の教育ワード」です

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不登校の近年の実態

2020年04月01日

(1)不登校の近年の実態

文部科学省の調査によりますと、不登校になっている生徒の割合(不登校生徒数÷その学年の全生徒数)は、小学校で0.26%(H9)→0.34%(H19)→0.54%(H29)と増加を続け、平成29年で約3.5万人の小学生が不登校に。
中学校でも1.89%(H9)→2.91%(H19)→3.25%(H29)と増加し、平成29年で約11万人の中学生が不登校となっています。
現在、中学校では30人学級の場合、クラスに1人が不登校となる計算です。
小学校は6年間、中学校は3年間ですから、中学生で不登校になる割合は小学生に比べて6.3倍増加することになります。
中学生の学年別の内訳では26%(中1)→36%(中2)→38%(中3)となり、中学1年から2年にかけて、最も不登校の増加率が高くなる傾向にあります。

不登校になる要因として、小学校では

  • ・友人関係のトラブル……18.9%
  • ・学業の不振………14.0%
  • ・教職員とのトラブル……4.0%
  • ・入学・転学・進級時の不適応……3.9%

が上位に挙げられ、
中学校では

  • ・友人関係のトラブル……28.2%
  • ・学業の不振……21.8%
  • ・入学・入学・進級時の不適応……7.0%
  • ・進路の不安……4.9%

のように、原因の特定が難しい小学生に比べて、中学生の方が不登校になる原因がより明確になっていくことが分かります。
不登校になった場合の相談先としては、地域の教育支援センター(適応指導教室)、教育委員会、児童相談所、福祉事務所、保健所、精神保健福祉センター、病院、民間団体、学校の養護教諭、スクールカウンセラー、担任の先生が挙げられます。
そして、これらの関係機関の取り組みにより、不登校の状態から再び登校できるようになった生徒は小学生・中学生それぞれ不登校児童・生徒のうち約25%いることも分かりました。
この中で、各自治体に設置されている不登校の小・中学生対象「適応指導教室」では平日の午前から午後までランチをはさみ、勉強、遊びを通した体力づくり、指導担当とのコミュニケーションが積極的に行われ、適応指導教室の出席日数が学校の出席日数として数えられることから、不登校児童・生徒の居場所のひとつとして地域に定着しつつあります。
近年ではNPO法人など民間団体によるフリースクールでも、登校日が学校の出席日数として正式に認定されるケースも増えています。

(2)不登校生徒の受け入れ高校

高等学校の区分には全日制(3年間で卒業)・定時制(4年間で卒業。一部高校では昼間部・夜間部を併用して3年間で卒業することも可能)・通信制(3年間で卒業。一部4年間)の3種類があります。
いずれの区分の高校を卒業しても、学校教育法に定められた高校卒業資格を取得することが可能です。
不登校生徒の場合は中学校の出席日数要件を全日制高校の受験資格で満たしづらいことから、定時制・通信制課程の高校を受験・進学するケースが一般的です。

通信制課程は近隣の限られた複数の県を対象とする「狭域通信制」、全国を対象とする「広域通信制」に分類されます。
「広域通信制」では全国に設置された、自宅から最寄りのキャンパス・学習センターに通学しますが、年1回本校で実施される宿泊型の集中スクーリング、大都市に設置された拠点の学習センターで年数回のスクーリングといった面接授業を必須とされる場合もあり、そのスタイルは各校さまざまです。

尚、学習センターとサポート校の違いも分かりにくいところですが、学習センターが一般的に通信制高校の直営とすれば、サポート校は学習塾のような位置づけとなるため、学習塾がサポート校の看板を出せばサポート校になります。
この場合、サポート校で通信制課程の勉強をしながら、本校などでのスクーリングを必要とする可能性が高くなります。学習センター・サポート校は週1回からの通学が可能ですが、通学定期・学生割引が通学先で可能になるかどうかは、事前に確認しておきましょう。




2016年には角川ドワンゴが設立したインターネット主体の広域通信制高校、N高校も登場し、中学時代に不登校であった生徒の選択肢は年々増え続けています。

千葉県を例に、不登校の生徒受け入れを得意とする3種類の異なるタイプの高校をご紹介します。
●千葉県立松戸南高等学校(千葉県松戸市)【公立定時制】
昭和51年創立、平成18年に午前部・午後部・夜間部の三部定時制高校として再編。
平成29年度は、全生徒のうち70%(午前部)、83%(午後部)、73%(夜間部)が30日以上の不登校を中学時代に経験。
高校入学後は、中学時代に30日以上の不登校を経験した生徒のうちの67%(午前部)、47%(午後部)、60%(夜間部)が不登校から回復し、高校への通学を実現しています。
すべての教科で少人数授業、英・数・国の習熟度別授業、「学び直し」のできるカリキュラムが本校の特徴です。

●中山学園高等学校(千葉県船橋市)【狭域通信制】
昭和23年に開設された、洋裁の専門学校がルーツ。
通信制課程で「平日スクーリングコース」(約300名)と「土曜スクーリングコース」(約50名)を設置。
平日スクーリングコースでは制服を着用し、週5日登校します。中学時代に不登校であった生徒の受け入れに力を入れており、全生徒のうち5~6割が中学時代に不登校を経験。
動物と触れ合ういのちの教育(AAE:アニマル・アシステット・エデュケーション)、富士山登山、劇団四季のミュージカル鑑賞といった独自の教育を実践するアットホームな学校です。
カリキュラムは「普通」「商業」「服飾」の3コースに分かれ、指定校推薦による大学進学の道も開かれています。

●興学社高等学院(千葉県松戸市)【広域通信制の技能連携校】
星槎国際高等学校(通信制課程)の技能連携校。
本校に通学しながら星槎国際高校のカリキュラムを受講し、高校卒業資格を3年間で取得します(平成30年の取得率100%)。
技能連携校は県の認可がおりていますのでスクーリングで他校に出向く必要がなく、本校で全ての学習が完結します。
英語・数学・国語などの必修基礎教科に加え、パソコン検定、プログラミング、デッサン、イラスト、アンサンブル、フランス語、ネイルといった全100種類のバラエティ豊かな授業を選択。
社会に適応する力を養うため、自分で解決できる力や対人関係を円滑にするための知識や技術を身につけるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)も必修科目として用意されています。
少人数制で担任・副担任の先生によるフォロー、カウンセラーにいつでも相談できます。

(3)高校合格のために

さまざまな形式で高校卒業資格が取得できることをご紹介しましたが、高校に通い不登校を回復しながら、新しい出会い、アルバイトへの挑戦など社会への視野が広がることにより、自らの意思で大学進学、専門学校、就職といったそれぞれの進路を獲得することができます。

以上ご紹介してまいりました高校の入学試験は、200字~800字程度の作文(試験会場でテーマを出題され書くタイプ、事前に準備した作文を参考に試験会場で書くタイプ)、学科試験(教科書の基本レベルの問題の3割程度を合格のボーダーラインとする試験)など、各校さまざまですが、義務教育範囲の基本的な教科学習を日頃から身につけておくことは必須のようです。

※参考資料
「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
(文部科学省)
「千葉県立松戸南高等学校の不登校経験者の受け入れ状況について」(松戸南高校)
「不登校経験者に対する教育について」(中山学園高校)
「学校案内」(興学社高等学院)

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