四谷進学会による鷗友学園女子中学高等学校-学校インタビューです。

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注目校インタビュー

鷗友学園女子中学高等学校

鷗友学園女子中学高等学校-学校インタビュー

四谷進学会プロ家庭教師センター(以下、四谷):今回は、鷗友学園女子中学高等学校で入試・広報部部長を務めていらっしゃる大内まどか先生にお話しを伺います。どうぞよろしくお願いいたします。

大内:よろしくお願いします。

四谷:まず学校の理念からお伺いできますでしょうか。

大内:本校は、学校が創設された過程とその理念を大事にしています。まず、初代校長の市川源三についてお話します。市川は、東京都がまだ「東京府」だった頃、東京府立第一高等女学校(東京府立の最初の高等女学校)で校長を務めていた人物です。彼は、当時としては非常に革新的で、新しい教育観を持っていました。当時はまだ男尊女卑が支配的な時代でした。尋常小学校(明治維新から第二次世界大戦勃発前までの時代に存在した初等教育機関の名称)を卒業したら、女性は家事労働や農作業などの家庭を支える仕事に就くのが一般的でした。しかし、彼は幼少期に学問を勧めてくれた祖母や、四書五経を読むような教養があり働き者だった母、いつも学級のトップを争った同級生の女の子といった優秀な女性に囲まれていたため、女性は元来男性に劣った存在ではないということを理解していました。その後、市川は高等師範学校に入ります。そこで、女性が社会に出ずに家事労働に従事するというのは、女性への教育システムや、教育方法が足りないのが原因だと捉え、自ら編集人となって雑誌『女子教育』を発刊するなど、女子教育の重要性を訴えました。また、女性を伸ばすためには、学問と生活を切り離すべきではないと考えました。今では「合科」という言葉も一般的になってきましたが、これを最初に日本で提唱したのが市川源三です。例えば、母性を養うための園芸という教科をおき、そこで作物を作る。その作物を栄養学として学び、家庭科という学問にする。作物を通して生物を学ぶ。また、四季折々の作物を育てながら古典を考えるなど、一つの科目を通して、色々なものに繋げることができます。このような学び方は、女性にこそ必要であると考えました。また、女性を社会の中で、活躍できる人に育てるためには、学問だけでなく、健やかな身体をつくることも重要と考え、女性の体育も奨励しました。さらに表現力や芸術的な教養を深める活動も奨励し、知性と感性のバランスの取れた学びを実践しました。この教育に感銘を受けた卒業生たちは、市川の教育を紡いでいきたいと考え、第一高等女学校の50周年記念事業として、市川を招き鷗友学園を創設したのです。

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しかし、市川は就任して5年で、心労がたたり亡くなりました。その後を継いだのが石川志づです。彼女は、市川の教え子で、府立第一高等女学校を首席で卒業した女性です。また、幼い頃より母に連れられて通った教会で出会ったのが、後に女子英学塾(現在の津田塾大学)を創設した津田梅子、さらに信仰を通して内村鑑三に出会い教えを受けました。石川は、校長を引き継ぐ際に、市川の残した女子教育の理想を守ると同時に、キリスト教精神に基づく人格形成と、国際理解教育に力を注ぐことを決めました。キリスト教精神を学校の柱に据えることで、聖書を困難に当たった時に乗り越えるための光としてほしいと考えたからです。また英語教育をしっかり行い、国際社会で活躍する女性になってほしいという考えから、国際理解教育を大切にしました。当時は第二次世界大戦中でした。英語教育は禁止されていましたが、戦争が終わったときには、アメリカ人とも対等に仕事をすることになる。そのための英語力を身につける必要があるという考えのもと、戦時中にもかかわらず英語の授業を続けました。その市川と石川の教えが今の鷗友の基盤になっています。

四谷:鷗友の教育には、そういった背景があるのですね。

大内:そうです。そして、市川が校訓として掲げたのが「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」です。

「慈愛(あい)」は、他者との関わり合いの中で、相手も自己も尊重することができる思いやりの心を持つ人になりましょうということです。様々な異なる意見があろうとも、共に生きる社会を築く。異文化であっても、他者を理解する心を持つ。それを「慈愛」としています。

「誠実(まこと)」は、自己の可能性を発見し、それを誠実に伸ばすことで、豊かで自由な感性と自らの道を切り拓く強い意志を持つ人になりましょうということです。神様は誰にでも能力を与えています。その与えられた能力に「誠実」に向き合って伸ばしていってほしいのです。

そして、その人が社会に出たとき、新たな創造を生み出せる人になってほしい。多様化する社会において、異なる価値観を持つ人々とも協調しつつ、平和な世界を創造する人になってほしいというのが「創造」です。「創造」という校訓が入っているのは本校の特徴といえます。

中1地理巡見4

「慈愛と誠実と創造」の理念は、現代においても色あせることなく受け継がれていますが、時代は常に変化し、それに伴い学校に求められるものも少しずつ変化していきます。そのため、求められているものを現代社会に合わせて実践していくべきだと本校では考えています。それを我々は「理念の現代化」と呼んでいます。5~10年で、現代社会は、大きく変化します。それでも、「慈愛」と「誠実」を失わず、そして「創造」する力があれば、どのような変化にも対応できると考えています。自分を見失わず、自分らしく、そして社会をより良くする方法を考えられる女性に育って欲しいと思っています。

四谷:具体的な取り組みとしては、いかがでしょうか。

大内:本校では、頭で考える勉強と、身体を使って身につける勉強のバランスが重要だと考えています。そのため、「知性と感性、精神性と身体性のバランス」を意識したカリキュラムを組んでいます。

学びというのは、教えられる学習だけでは定着が低くなります。知識を加えようとしても、自分でアクションを起こさなければ知識は定着しません。インプットだけではなく、こまめにアウトプットできるような学びの形を大事にしています。

中1国語2

すべての授業がその観点で行われています。理科で実験が多いのも、単なる知識の習得ではない、実体験に基づいた知識を理論と結びつけてほしいからです。社会科でも、例えば中学1年の地理では年に2回巡検を行っています。世田谷周辺の地形や史跡を実際に見て、実地で学習する授業です。国語では、中学1年生で「百人一首大会」をやるのですが、百首を覚えるだけではなく、歌の背景や意味を含めて学習し、最後には体育館で大きい札を使い、運動会のように行います。各クラス団結して、楽しく取り組むことで、定着させるという授業になっています。

また、リトミックを中学1年から6年間取り入れているのも、鷗友の特徴です。
鷗友学園のリトミック教育はこちら

リトミック

近年はプレゼン能力も必要と言われますが、それには身体表現能力が大切になります。どんなに内容が良くても、資料が素晴らしくても、表現力の有無で説得力には大きな差が生まれます。リトミックでは、集中力が養われるのと同時に、自由な表現力が身につきます。また、創作ダンスに取り組んでいます。高校2年生では、自分たちでグループをつくり、テーマを決め、そのテーマに沿ったダンスをつくります。ダンスが上手い子だけが前で踊るのではなく、苦手な子でも身体の動きを使い、しっかりと表現しています。そういった「身体で表現する」ということを大事しています。

また、「感性」を育てるための芸術教育を大事にしています。本物に触れてほしいという考えから、中学1年の美術では最初に油絵に取り組みます。美術の時間に様々な画法を学ぶことで、大人になって絵画を見た時に、その絵がどのような画法で描かれているのかを分かる人間になって欲しいのです。音楽では、原語で歌うようにしています。その言語の持っている響きの美しさ、そして言葉とメロディーの融合を感じて欲しいと思っています。書道も芸術科目として学びます。様々な書体を学習し、例えば湯呑みに好きな書体で、好きな言葉を書いて焼き付けるなど、「書」そのものを芸術として学びます。人に何かを伝えるとき、どう表現するかの原点が「感性」「身体性」になるので、体育や芸術の時間を削って5教科をやるのではないカリキュラムを組んでいます。

書道

四谷:様々な観点から教育を実践されているのですね。

大内:さらに言うと学習以前に、女子が安心して学習できる環境づくりが大切です。鷗友が育てたいのは、いわゆる骨太な女子です。社会に出て、多様な価値観の中でも主体的にリーダシップをとり、新しい価値観を生み出していけるような生徒です。

そのためには入学してきたときに、本校が自分の居場所だと感じられることが大切になります。

「居場所があると思える」というのは、自分を理解し、認めてもらえるという気持ちが持てるということです。友達がいることも大切ですし、クラブ活動で先輩から声を掛けてもらうことも大切です。例えクラスで目立たないような大人しい子であっても、自分が認められていると感じられることで、自己肯定感が生まれます。

この自己肯定感が、すべての活動の原点となります。

そのため、本校では中学1年のクラスは少人数にしています。中学2年以降は1クラス40名程度ですが、中学1年だけは30名前後にしています。さらに、3日に1回席替えも行っています。また、4月時点では昼食時もグループを3日に1回変えています。どんなに大人しい子でも、3日に一度は「こんにちは」と声を掛けてもらえる、1ヶ月程で、クラスのほとんどの子と話ができる。このような環境の中で、さまざまなグループワークに取り組むと、いつの間にかどのような集団の中でも自分はやっていけるという自信がつくのです。自己肯定感が育まれていくと、例えば自分の意見に反対する意見が出されても、自分が否定されたとは捉えなくなり、他者の意見も肯定的に考えるようになります。そして、間違えたり失敗したりすることが怖くなくなり、発言に自信を持てるようになるのです。このような安心・安全な環境が整っていると、「できる自分」も「できない自分」も全て肯定できるようになります。肯定してもらえるから受け入れることができ、その結果、皆で高め合える。この環境こそが、女子には大切だと考えています。

特に中学1~2年では全ての教員が「安心・安全な学校を用意して自己肯定感が持てるような居場所のある学校づくり」を意識しています。知識の獲得だけではなく、色々な形の学びがあることを知ってもらい、それが土台になるので、高校になると自ら学んでいける生徒になっていきます。一般に、女子はコツコツ勉強するが最後に伸びないと言われることがあります。しかし、決してそうではありません。鷗友の生徒には最後に伸びる生徒がたくさんいます。その、最後に伸びる力をつけるための6年間だと捉えて欲しいと思っています。6年間あるという中高一貫校の最大の利点を生かして、焦らずに「人間作り」をしていきたいと考えています。

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特徴のある授業①園芸授業

中学1年で週2時間、高校1年で週1時間の授業で、鷗友独自の授業といえます。園芸科という教科として、専任教諭もいる必修科目です。敷地内に園芸の実習園があり、各生徒にスペースを設け、種を撒き、雑草を取り、収穫をします。その他、中学1年では先生が週1回4種類の花を持ってきて、その花の原産地や何科の植物なのか等を覚える授業もあります。そして、花名テストも実施し、年間で50種類以上の植物を覚えるようにしています。押し花でカードを作ったり、クリスマスリースを作ったり、鉢植えで寄せ植えを作るなど、様々な内容を授業に取り入れています。

作物を育てるのは、中学1年の最初はラディッシュからになります。最初にラディッシュを育てるのには意味があります。ラディッシュはハツカダイコンという別名があるように、発芽から3週間ほどで収穫ができます。この3週間という短期間の中で、生徒によって出来が大きく異なるのです。教諭の指導通り、間引きをして、水やりをしている生徒のラディッシュはよく育ち、甘くなります。しかし、そこを怠ってしまうと辛くて小さいものになってしまします。これにより「丹精込める」とは、どういうことなのかを肌で感じることになるのです。自分がやろうとしていることに、誠実に向き合っているかどうかで結果が変わるということを理解できます。

高校1年では、世界の環境問題についても園芸の授業を通じて学んでいきます。卒業生の中にはこの授業をきっかけに農学部等に進学し、専門の分野で活躍している人もいます。

特徴のある授業②英語

鷗友では、どの授業もアクティブな授業といえますが、特に英語は特徴的です。

平成16年から日本語を一切使わずに、日本人教員が全て英語で行うオールイングリッシュの授業を行っています。オックスフォード大学出版局の教材を使用して、英語をゼロから勉強していくカリキュラムを組んでいますので、本校では、入学前に英語は予習してこないように伝えています。英語を少し勉強していると、文章を日本語に置き換えて考えてしまったり、主語・述語と訳そうとするので授業にも遅れてしまいます。

英語はコミュニケーションなので、身振り手振り、顔の表情などから入り、英語を英語で理解する力をつけることが大切です。今の日本の英語教育は、英語を日本語に訳してから学ぶという教育になっています。大学入試では、文章量が多く、要旨をまとめる等の問題も出てきていますが、日本語に和訳して、もう1回英語にしていると間に合いません。文章を頭から、英語で理解できる力が求められているのです。日本語に変換しなくても英語で理解する力は、今の社会で必須な能力です。オールイングリッシュの授業は、不安に思われるかもしれませんが、最初は完璧に授業を分からなくてもいいと伝えています。今は分からなくても後になれば必ず分かるので、まずはどんどん先に進むことを推奨しています。そうすると教わろうという姿勢から、何とか自分の力で理解しようという姿勢に変わってきます。この姿勢は、他の授業にも影響していて、生徒が主体的に授業を受けるという本校の特徴にもなっています。ユーモアのある教員が揃っていますので、授業が楽しく、生徒は笑顔で授業を受けています。

部活動

鷗友には37のクラブがあります。鷗友の生徒は、部活を頑張りたいから、勉強も頑張ると言っています。そのため、加入率はほぼ100%で、高校2年生でも約95%は加入しています。掛け持ちをしている生徒もいるので、述べ人数だと約130%近い生徒が加入しています。

鷗友では「定休日」という1週間の中で好きな日に部活を休める制度があります。中学1年生では、毎日部活を行い日曜日にも試合があると体力的に厳しいので、定休日には身体を休めるようにと言っています。上級生になると「定休日」の使い方は様々です。他の部活を掛け持ちする生徒もいれば、補講や課外活動に充てる生徒もいます。高校1年からは放課後に外部講師を招いての英語でのディベート講習会や、希望者向けの数学の特講なども行っています。また、月謝制にはなりますが、放課後に外部講師を招いての講座も用意しているので、それに充てる生徒もいます。文化部で、人数が多いのはブラスバンド部です。音楽系がブラスバンドだけでなく、管弦楽もあるのも鷗友の特徴です。運動部では、首都圏の女子校では珍しく土のグラウンドがあるので、ソフトボール部が頑張っています。部活以外の同好会も本格的に活動しており、例えば歴史研究同好会は、博物館や美術館で新しい企画展があると積極的に行っています。毎年テーマを決めて、合宿も行い、徹底的に調べて学園祭で発表しています。その他の部活・同好会も規模は様々ですが、やりたいことを徹底してやるというのが鷗友の魅力です。好きなことに熱中できる環境があるのです。

東北学習旅行

東日本大震災の後、生徒が主体となり動き始めたのがきっかけで行われている行事です。震災後、何か力になれないかという生徒の意見から、生徒会役員が中心となって初年度は支援物資を送りました。2年目には、現地を知りたいという思いから、生徒自ら南三陸町の観光協会と連絡を取り、学校に交渉して、現地の方を招き、全校生徒に向けての講演会を行いました。その後も文化祭で東北物産展を開いたり、南三陸町出身の大学生や高校生との交流会を開く等、様々な活動を行っていましたが、震災の事を現地で学びたいという意見が強く、有志で1泊2日の東北学習旅行を行うことになりました。東日本大震災を忘れずに、自分たちが学んでいる東京で何が出来るのかを考えるきっかけとすることが目的です。

世の中で起こっていることを「自分の問題」として捉え、「ホンモノ」(現状)を見ることで、「なぜ?」と疑問を持ってほしい。そして、その「なぜ?」を学問に結びつけ、「学ぶ」きっかけにして欲しいと思っています。

平成28年度合格実績

〇国公立大学 ※( )内の人数は現役生になります。

東京大学7名(3名)
京都大学3名(2名)
一橋大学3名(3名)
東京工業大学6名(4名)
東京外語大学7名(7名)
東京農工大学8名(6名)
お茶の水女子大学2名(1名)
横浜国立大学7名(7名)
筑波大学5名(5名)
千葉大学6名(6名)など

〇私立大学
早稲田大学98名(84名)
慶應義塾大学50名(42名)
上智大学46名(44名)
東京理科大学76名(51名)
国際基督教大学10名(10名)
明治大学130名(109名)
青山学院大学31名(30名)
立教大学76名(70名)
中央大学52名(46名)
法政大学33名(26名)など

〇医学部医学科(現役)
信州大学1名
鳥取大学1名
横浜市立大学1名
札幌医科大学1名
関西医科大学1名
東邦大学1名
順天堂大学1名

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